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東京高等裁判所 昭和29年(く)65号 決定

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

〔判旨〕商法第四九一条にいう預合とは相手方と通謀して若しくは相互にその情を知りながらなす仮装行為を汎称するものと解する。従つてその一態様である株金の払込のための預合とは、株式会社の取締役が金融機関の役職員と通謀して若しくは相互にその情を知りながら真実会社の資本とする意思がないのに拘らず、単に増資の登記をなす手段方便としてその登記が完了するまで恰も増資による資本とするためになすが如き払込の事実を作為する行為を指称するものと解する。例えば、取締役が真実会社の資本とする意思がないのに拘らず、金融機関の役職員と通謀して若しくは役職員においてその情を知りながら取締役と金融機関との間に払込金額と同額或はその一部に相当する金員につき貸借契約を締結し、金融機関はこれを会社の預金口座に組み入れた上、これをもつて株金の払込を完了したように作為し、次で金融機関は保管に関する証明書を交付し、これによつて増資の登記を完了するや、該保管金と先の借入金とを決済するが如き場合をいう。

しかして取寄にかかる前記被告事件の訴訟記録及び本件再審請求事件において原審並びに当審に提出した資料、並びに当審における事実取調の結果によれば、冷凍工業の代表取締役であるAは、右会社の資本金一千万円を金四千万円増加して金五千万円とするに際し、真実会社の資本とする意思がなかつたとのに拘らず昭和二三年十二月S銀行T支店長Bに対し、Aが取締役をしていたA産業振出の金額四千万円の約束手形をもつて右銀行から金四千万円を三日間借り受け、これを冷凍工業の株金払込金に充当して銀行から証明書の交付を受け、それによつて登記を完了した暁には直ちに決済する旨を懇請し、Bはその趣旨を諒承し、ここに両者共謀の上右銀行からAに金四千万円を貸付ける旨を約し、Aはその金員に対する三日間の利息として金五万円を右銀行に納付したこと、同銀行はその別段預金元帳中冷凍工業の口座に昭和二四年一月一〇日払込金として合計金四千万円入金ありたる旨の記帳をなしたこと、Aは右銀行から金四千万円の保管に関する証明書の交付を受けこれを会社資本増加登記申請書に添付して同月二六日頃東京法務局日本橋出張所において増資の登記申請をなしたこと、その登記が完了するや右の預り金と先の借入金とを決済したことを認めることができる。従つてAは銀行支店長たるBと通謀の上真実会社の資本とする意思がないのに拘らず増資の登記をなす手段方便としてその登記が完了するまで払込を仮装するための行為をなしたものということができるから、Aはまさに商法第四九一条にいう払込を仮装するため預合をなしたものに該当する。

〔解説〕商法第四九一条のいわゆる預合罪について相手方との間に通謀乃至相互にその情を知つていることを必要とするかどうかについて学説上並びに実務上意見がわかれていることは周知のとおりである。当庁においては最近の判例としては仔細な点は別としてすべて通謀を要するという見解に一致している。(二九・一一・三〇第七刑事部・二八(う)第二六五四号事件判決、三〇・四・一二第十刑事部・二九(う)第四四〇号事件判決・東京高裁時報第六巻第四号参照、三〇・六・九第八刑事部・二九(う)第一八七五号事件判決同時報第六巻第六号参照等)他庁のものとしては札幌高裁第三部三〇・八・一六判決(高裁判例集第八巻第五号七三四頁)がある。これ亦通謀説である。

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